丸山耳鼻咽喉科医院 野坂町 秩父市 耳鼻咽喉科

 

舌下免疫療法について

アレルギー性鼻炎の舌下免疫療法について

1)舌下免疫療法とは?

アレルギー性鼻炎には大きく分けて二つの治療法があります。一つは症状を一時的に抑える「対症療法」で、もう一つは病気自体の完治を目指す「根治療法」です。対症療法はアレルギー性鼻炎の治療として最も普通に行われている方法で、薬を使う方法がメインですがレーザー光線などを使って手術をする方法もあります。手術治療は一般的に根治療法のイメージがありますが、アレルギー性鼻炎の場合は対症療法の一つなので手術を受けてから何年かするとまた症状が出てきてしまいます。

これに対して根治療法はアレルギー性鼻炎の完治を目指す治療法で、これまで唯一存在していたのが「減感作療法」です。これはアレルギーの原因となる物質から抽出したエキスを体に注射して病気を治してしまおうという方法なのですが、もともとアレルギーは体質から来ているのでそう簡単には治ってくれません。だいたい医療機関に2~5年間通って50~100本くらいの注射をひたすら受け続けなければなりませんでした。しかもそれだけ頑張っても完治する人は2割くらいしかいませんでしたので、この治療法はあまり話題にもならず一部の医療機関でしか行われていませんでした。

舌下免疫療法はこの減感作療法の改良型とも言えるものです。研究によって舌下つまり舌の裏側に薬剤を服用するだけで注射と同じような効きめがあることが分かったため、より体に負担のかからない方法に進化したのです。確かに薬を舌下に含むだけなら注射と違って痛みはありませんし、薬を処方してもらう時以外はわざ わざ医療機関を受診する必要もありません。ただ基本的なメカニズムは減感作療法と同じですので、やはり治療期間は2~5年間は必要で、本当に治療がうまく行って完治する人が2割くらいというのも変わりません。

また舌下免疫療法は体にアレルギーを起こすものをわざと体に入れる治療法ですので副作用が出る危険性があります。もともと副作用は非常に少ないと言われてはいますが、薬を使用してから30分以内に口の中にかゆみや腫れが出たり、のどがチクチクするといったアレルギー症状が出ることがあります。さらに重い副作用としては、まれに舌下に潰瘍ができたり最悪の場合は重い喘息症状やアナフィラキシーショックが出て生命にかかわる可能性もゼロではありません。

※現在のところ舌下免疫療法が保険適応になっているのは、「ダニ」または「スギ花粉」によるアレルギーです。

2)舌下免疫療法を受けられない方

次のような方は舌下免疫療法を受けることができません。

  1. 重症の気管支喘息がある人
  2. 悪性腫瘍や免疫系の病気(自己免疫疾患、免疫不全症など)を持っている人
  3. ダニまたはスギ花粉以外が原因になっているアレルギーの人

3)舌下免疫療法をご希望の方は

舌下免疫療法は指定の医療機関でしか受けることができませんので、まずは耳鼻咽喉科専門医かアレルギー専門医にご相談下さい。またスギ花粉症では花粉が飛んでいる2~4月に治療を始めることはできませんので、それ以外の時期に医療機関を受診して下さい。

受診された医療機関では、アレルギーの原因を血液検査などで確かめます。原因が「ダニ」または「スギ花粉」と確認できたら治療を始めますが、それ以外の原因によるアレルギー疾患(ブタクサ花粉、カビ、動物の毛など)については今のところ舌下免疫療法はできません。そのため複数のアレルギーを持っている方につきましては、この治療を受けることはできますが「ダニ」と「スギ花粉」についての効果しか期待できません。

治療にあたって注意が必要な人は、高血圧でβ-ブロッカーを服用している人、ステロイド剤を使用している人、抗うつ剤を使用している人、重い全身の病気を 持っている人、65歳以上の高齢者などです。また、妊娠中あるいは授乳中の人、妊娠を予定している人はできれば治療は避けたほうが良いと思われます。

治療に使う薬は毎日1回舌下に服用します。「ダニ」と「スギ花粉」の両方について治療する場合は、それぞれ薬剤が異なりますので、少し時間を空けてから服用します。初回は必ず医療機関で投薬を受け、副作用が出ないかどうかしばらく様子を見ます。副作用がなければ翌日からは自宅で薬を使用しますが、副作用を抑えるため最初は少ない量から始めて薬の量を増やしてゆきます。その後は毎日同じ量を服用しますが、2~5年間は根気よく服用を続けます。

治療期間中に感冒で熱が出たり急性の感染症にかかってしまった場合は一時的に治療を中断します。また、口内炎や口の中に傷ができてしまった場合、歯科治療を行う場合も治療を中断します。

なお治療にかかる費用は、「ダニ」あるいは「スギ花粉」のどちらか片方の治療を行う場合、3割負担の方で検査代 診察料 薬剤費などを全部含めて一日約50円です。

一般的にこの治療法は副作用が非常に少ないとされていますが、副作用を出にくくするため服用の前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴などは避けてください。また、非常にまれではありますが重い喘息症状やアナフィラキシーショックが出て生命にかかわる危険性がゼロではありませんので、一人でいる時や夜間の服用はできるだけ避けるようにして下さい。

舌下免疫療法を2~5年間継続できた場合、アレルギー性鼻炎が完治する人は2割くらいと言われています。せっかく治療を頑張ったのに全く効果がない人がやはり2割くらいおり、残りの6割の人は完全に治ったわけではないけれども今までよりは楽になったという人です。また一旦治ったように見えても治療を中止した後で再び症状が出てきてしまう、いわゆる「ぶり返してしまう」場合もあります。

ということで治療自体はたいへん簡便な方法ですが、非常に根気が必要な上にそれだけ治療を頑張っても効果が100%ではないということや重い副作用が出る危険性があることなどを良く考えてからこの治療に望んで下さい。

もし、この治療法でお分かりにならないことがあれば、お気軽に当院へご相談下さい。

※舌下免疫療法についての詳細は、リンクページのアレルゲン免疫療法ナビでもご覧頂けます。